雨(6) 友達の好きな人
教室では誰もが恋に落ちていた。そんな楽しく黄色の声が飛び交うクラスもタンポポの種のようにいろんなところにふわふわと散っていき、ハートで満開の桜並木を歩きながらの新しいクラス。
そこでも同じだった。いたるところで淡い青色と淡い桃色が交錯し、僕やサトシなどの独り者は、その色をさらに鮮やかにするための緑になる。
サトシは1年のときからの友達で、運良く2年になっても同じクラスになった。語弊があるがいつも2人一緒にいた。サトシには中学の頃から好きな人がいた。何度彼の思いと思い出と思い込みを聞いただろうか。顔は見たことはなかった。
彼の思いは一途だった。そしてその一途な思いを聞いていると嫉妬してくる。もちろん彼にではない。人に恋をしているという気持ちに。恋に飢えていた。
そんな渦中に巻き込まれながらも、どこか違った。僕はそんな渦に巻き込まれたいんじゃない。しかし、どこにも僕を恋に落とす人物なんていなかった。どこかに恋が落ちていなかと探すのが習慣となった。
なかなか見つけようとも、恋なんてそんじょそこらには落ちてなんかいなかった。僕の目は視力3・0を超えていた。それでも見つからず、コンタクトでも付けようかとサトシと笑っていた。笑っている場合じゃないとも思った。
ある雨の日サトシと一緒に帰っていると、傘の十六角形から手が威勢良く飛び出し、前を差しながら見たこともない素晴らしい笑顔のサトシがいた。
「あれあれ、あの子だよ。かわいいなあ、しかも性格もいいんだよ、これが。今日はいい日だ。明日も会えるかなぁ。話したいけどなあ。。てかどうだヒデユキ、かわいいだろ?」
そんな声に気づいたのか気づいてないのか、彼女は振り返った。恥ずかしそうに手を振るサトシ。ふわっと空気を持った髪の毛は揺れ、優しい笑顔で細い手を振る。彼女は一瞬僕にも目をやった。そこには音を出しながら渦に巻き込まれる僕がいた。
台風が来るには早すぎるが雨の多い梅雨の日だった。
つづく
そこでも同じだった。いたるところで淡い青色と淡い桃色が交錯し、僕やサトシなどの独り者は、その色をさらに鮮やかにするための緑になる。
サトシは1年のときからの友達で、運良く2年になっても同じクラスになった。語弊があるがいつも2人一緒にいた。サトシには中学の頃から好きな人がいた。何度彼の思いと思い出と思い込みを聞いただろうか。顔は見たことはなかった。
彼の思いは一途だった。そしてその一途な思いを聞いていると嫉妬してくる。もちろん彼にではない。人に恋をしているという気持ちに。恋に飢えていた。
そんな渦中に巻き込まれながらも、どこか違った。僕はそんな渦に巻き込まれたいんじゃない。しかし、どこにも僕を恋に落とす人物なんていなかった。どこかに恋が落ちていなかと探すのが習慣となった。
なかなか見つけようとも、恋なんてそんじょそこらには落ちてなんかいなかった。僕の目は視力3・0を超えていた。それでも見つからず、コンタクトでも付けようかとサトシと笑っていた。笑っている場合じゃないとも思った。
ある雨の日サトシと一緒に帰っていると、傘の十六角形から手が威勢良く飛び出し、前を差しながら見たこともない素晴らしい笑顔のサトシがいた。
「あれあれ、あの子だよ。かわいいなあ、しかも性格もいいんだよ、これが。今日はいい日だ。明日も会えるかなぁ。話したいけどなあ。。てかどうだヒデユキ、かわいいだろ?」
そんな声に気づいたのか気づいてないのか、彼女は振り返った。恥ずかしそうに手を振るサトシ。ふわっと空気を持った髪の毛は揺れ、優しい笑顔で細い手を振る。彼女は一瞬僕にも目をやった。そこには音を出しながら渦に巻き込まれる僕がいた。
台風が来るには早すぎるが雨の多い梅雨の日だった。
つづく